セント・トーマス考1 ロリンズと光太郎



(写真 高村光太郎彫刻『鯰』 草野心平『わが光太郎』所収)


有名なアイラ・ギドラーのライナーノーツの一節を昨日引用した。

ロリンズをロードス島の巨人(Colossus of Rhodes)に準えた文章だ。

このアポロン像は224年の地震で崩壊した。

ソニーロリンズは地震でぐらつくことはない」

この一行だけ引用した。後の文を引かなかったので、続ける。


・・・地震でぐらつくことはない。彼はロードス島に住んでいるわけでも

地震の多い)カリフォルニアに住んでいるわけでもない。(訳は竹内克巳さん)


ところで、セント・トーマス。

ロリンズのオリジナルで、母の生まれ故郷セント・トーマス島

カリプソソングをもとに即興で演奏したものだ。


セント・トーマスといえば You are such a doubting Thomas!

(疑り深い人ね)の代名詞、12使徒のトーマス


(ちなみにトミフラもトーマス・フラナガン





エスとは双子の兄弟とも言われている。

エスの復活を自分の目で確かめるまで信じなかったお弟子。


わたしは、その手に釘あとを見、わたしの指をその釘あとにさし入れ、また、わたしの手をそのわきにさし入れてみなければ、決して信じない


昔、高村光太郎の『美とはなにか』を読んで、この一節に出会った。

その時は、セント・トーマスのこととは知らなかったし

まして、真宗とのつながりも知る由はなかった。



高村光太郎の詩


 蝕知


 或男はイエスの懐に手を入れて

 二つの創痕を撫でてみた。

 一人のかたくなな彫刻家は

 万象をおのれ自身の指で触ってみる。

 水を裂いて中をのぞき

 天を割って入りこまうとする。

 ほんとうに君をつかまへてから

 はじめて君を君だと思ふ。