無為堂の残したもの

午前六時、晨朝の鐘の音で目覚める。

窓を開けると

・・・・・

人間いたるところ青山あり

いずくんぞ墳墓の地を選ばんや

・・・・・


「無為堂」の朝である。


さて、ponの宗教哲学「他者論」

「われーわれわれ」

の問題を先鋭的に問うている

ジャン=リュック・ナンシー

その出発点ともいえる

無為の共同体』(西谷修訳)

をなんと

奇しくも



「無為堂」で読むことが出来る僥倖をえた。


たまたま堂の先住さまが遺されたものに

スピーカがあった。

父の意志を継ぐわかい堂主さまが

「父の音を再現したい」

という強い熱意を持たれていた。

また、スピーカ自体も一部修復が必要な箇所がある。


この要望にこたえたのが、なんと我らが「花虫」さんなんである。


「堂主さま。お堂に一日泊まらせて下さい。

 助手を五人連れ籠もります。


 先住の音を必ず再現します。」


・・・・・


 ゴッドハンドをふるう花虫さん


 徐々に往年の音を蘇らすスピーカ

 
 若い堂守さまが、


「義父に聞かせたかった」



 この一言にどれだけみな報われたか。






 そして、朝。


 斎戒沐浴した「はな虫」さん


 助手を起こし、いよいよ最後の修復にかかる。


 慎重に台座から外される本体



 何のためらいもなくメスを入れるはな虫さん。


 無事終了。


 やっと皆の顔に笑顔が



 堂守さんの心のこもった朝食を皆で戴き



 「無為堂」を後にする。



 (花虫さんは「立つ鳥跡を濁さず」なんである。


 皆できっちり後片付け。)



 あっ


 これ


 だれか片付けた?