Never let Me Go 下


(いやはや、うつくしい)

ステイシー・ケントは、好きな作家、カズオイシグロが出演するという

ラジオ番組を聞いていた

「イシグロさん、好きなミュージシャンの曲のリクエストをお願いします」

「では、ステイシー・ケントを」

ということで

二人の交流ははじまり

その結実は、

"Breakfast on the Morning Tram"

という一枚のアルバムとなった。

カズオ・イシグロは、彼女のために四曲作詞している。

ステイシー・ケントはそのお返しに

カズオ・イシグロの新作『Never let Me Go』の

表題曲を演奏しているのである。

ある日、村上春樹カズオ・イシグロは食事をしていた。

その席で大西順子の話題が出て、村上はイシグロに

件のCDを後日贈った。

それからしばらくしてイシグロは新作『Never let Me Go』を上梓した。

その題名をみて村上は驚いた。

贈ったライブ盤の中で大西は"Never let Me Go"を演奏していたからである。

その大西はあるライブ・ツアーの最終日

演奏を終えると引退を表明した。

(この間のことは「厚木からの長い道のり」に詳しい)

サイトウ・キネン・フェスティバル松本の〆で

大西は小澤征爾の指揮の下「ラプソディー・イン・ブルー」を演奏している。

そして、アンコールで披露した曲が

"Never let Me Go"

村上へのオマージュなのかもしれない。