「清潔な疾病」あるいはその消滅


マイケル・ジャクソン演じる「真っ黒なアビシニア王子」が

ジョディ・フォスタークレオパトラ」に恋い焦がれていた


(ジョディのかわりに・・・)


キャラヴァンの焚き火の前でタンバリンか何かを持って

『ビリージーン』を歌い踊りながら


そんな映画を想像している『ダンス・ダンス・ダンス』の主人公「僕」が

いるかホテルの「完璧な暗闇」の中で

「羊男」と再会するのが


1983年3月


主人公の「僕」は


 「その春に流行っていた曲をよく覚えている。

 マイケル・ジャクソンの唄が清潔な疾病のように世界を覆っていた」

     (村上春樹ダンス・ダンス・ダンス』下p53)


その翌年を

メルクマールとする小説

『1Q84』が刊行された


時を同じくして


「マイケルも死んだ」


(ユキの持つオールディーズの90分テープ)


「まずサム・クックが『ワンダフル・ワールド』を歌った。

「僕は歴史の事なんて良く知らないけれど・・・・」

 いい歌だ。サム・クック、僕が中学三年生の時に撃たれて死んだ。

 バディ・ホリー『オー・ボーイ』。

 バディ・ホリーも死んだ。飛行機事故。

 ボビー・ダーリン『ビヨンド・ザ・シー』

 ボビー・ダーリンも死んだ。

 エルヴィス『ハウンド・ドッグ

 エルヴィスも死んだ。

 麻薬漬け。

 みんな死んだ。
 
  (同上巻192ページ)


 マイケル『ビリージーン』

 マイケルも死んだ

 ・・・・・

 みんな死んだ。



 R.I.P