ザルツブルクの小枝

大岡昇平は、1953年ロックフェラー財団の奨学資金を受け、アメリカ・ヨーロッパへの留学の旅に出た。

その旅の途中、由縁のハライン塩坑下りをした。

モーツアルト生誕の地、オーストリアザルツブルグ州でのことである。

ザルツブルグはその名の示すとおり「ザルツ(塩)ブルグ(城)」で、ハプスブルク家の「塩の御料地(ザルツカマーグート)」として栄えた。

大岡が塩坑に降りたのは、モーさんではなく、

佐藤允彦の初リーダー作「パラジウム」でもうたわれた、スタンダールのいう「ザルツブルクの小枝(『恋愛論』)」を観るためであった。

ザルツブルグの名を有名にしたのはモーツァルトだが、次はスタンダールのはずである。『恋愛論』中『ザルツブルグの小枝』には、恋愛の『結晶作用』の美しい比喩がある。彼はそれを付近のハラインの塩坑で、廃坑に投げ込んだ枯枝が二ヵ月後には、白く輝く結晶で覆われる作用にたとえた。この比喩はスタンダールの名と共に、極東まで届いている。ところでザルツブルグの人は誰もスタンダールの名を知らない。」(『ザルツブルクの小枝 アメリカ・ヨーロッパ紀行』中公文庫 P262)


一昨年の暮れ近く、学友の「たまご王子」こと岩田憲明を失った。その日から陰鬱な日々が続いたが、それから二ヶ月後、滅多にふらない雪がうっすらだけれど、降り積もった。
初めて雪を見た子どもたちは大はしゃぎで、車に積もった雪で、雪だるまを作った。

ふと自分の中で、何かが動いた。

いそいで部屋に戻り、カメラを持ち出し一枚撮影。

それをブログの一ページ目に掲げた。

(写真はその時作った雪だるま。冷凍保存されています)





一年たちました。

これからもよろしく。