白骨の御文考

朝(あした)には紅顔(こうがん)ありて、

夕(ゆうべ)には白骨(はっこつ)となれる身なり

写真は九相詩絵巻(コンパクト版 日本の絵巻 7 中央公論社

(残念ながら序文は失われている)

九相とは、九想とも書く。

人の屍が土灰に帰するまでに変わっていく、九つの姿のこと。

もともと無常なるべき肉体に対する執着を除くために、人の屍について行う

九種の観想をいう。

(出典 同上)

写真上 右

序 生前の姿

若く美しい女房が、上畳(あげだたみ)の上に座っている。

紅の袴を着け、大うちぎを着用している。

退色してさだかではないが、淡緑地に唐草文様が織り出されている

女の盛りの姿を描くもの。



写真上 左

第一 観想の一

日頃の美しい顔色は、病中に衰えて、そのふくよかな身体は

さながら眠るがごとし。



写真 下

右 第七 骨連の相

墓はまだ建立されていないのに、屍はついに肉や

五臓六腑のすべてを失ってしまった。

しかしながら、残る白骨は相連なって、五体の原形をとどめている。



左 第八 骨散の相

白骨のまわりには、鬱々しい蔓草がまとわる。

白骨を選りあげて拾うことも出来ない。


(つづく)