地蔵菩薩の涙


黒川温泉 元湯

「地蔵湯」

地蔵菩薩は、釈尊入滅の時から

五十六億七千万年後

弥勒菩薩下生の時まで、

衆生救済をせんがため、僧形のまま

修行を続ける。

甚吉の身代わりとなった地蔵の首を

肥後に祀らんと願う一修行者が

このち黒川で休息した時

「ここへ祀れ」

と告命がおりた。

と同時に湯が湧き出る。

300年前の話である。

共同温泉 穴湯)

誰もが入れる共同温泉はいうまでもなく

温泉手形を求めれば、どこでもだれもが入湯できる。

黒川の繁盛はこの試みに尽きる。

が、七年前

だれもが入れる温泉の試みが崩れる

ハンセン病回復者の宿泊拒否事件だ。


たまたまこの地を訪れた

f先生が

アイ・レディース宮殿の後はどこですか

とお尋ねになった。

土地鑑のあるRSRさんが

地図を前に、説明した。

「更地になったままで・・・」

ぽっかりと空いた穴

その穴を満たすのは

菩薩の涙

屹立する地蔵菩薩



この地を去るのか